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GREETING
ごあいさつ
金沢大学では1998年頃から市街地における自動車の自動運転を実現する技術開発を開始しました。自動運転には、走行する空間を高精度に表現する高精度地図の作製・維持管理技術から、自律的に走行させるために必要となる認知・判断技術に至るまで、多岐に渡る技術開発が必要となります。金沢大学では、これらの自動運転に必要となる一連の要素技術について網羅的に検討し、独自の自動運転システムを学術的な観点から研究開発をしてまいりました。
また関連する企業との連携のもと、2015年2月より国内の大学で初となる一般道での公道走行実証を実施するなど大きな研究成果を上げてまいりました。そしてこれらの取り組みを基として、2015年4月に金沢大学の優位性のある研究のさらなる強化および異分野融合研究の一層の進展を目的として設立された新学術創成研究機構(Institute for Frontier Science Initiative)内に、本研究所の前身となる自動運転ユニット(Autonomous Vehicle Research Unit)が設立されました。この自動運転ユニットでは、自動運転技術の更なる高度化とともに、自動運転システムの過疎地における移動手段としての活用について国内で先駆的な取り組みを行い、様々なメディアから多数の報道が行われる等大きな注目を集めてまいりました。
このような背景のもと、新学術創成研究機構自動運転ユニットが発展的に解消され、2021年4月に金沢大学の全学的な組織としてこの高度モビリティ研究所(Advanced Mobility Research Institute)が設立されました。高度モビリティ研究所では、金沢大学が優位性を有する自動車の自動運転技術をコアとし、様々な乗り物の高度化を図るとともに、その社会導入に向けた課題の整理や、高度化された乗り物に様々な付加価値を提供することによって新たな未来社会を創造していくことを目指しております。これらの実現には、高度モビリティに関連する産学官金との連携が欠かせないものと考えております。
高度モビリティ研究所では、これらのステークフォルダの皆様方と密な連携を図りながら研究開発を行うとともに、その社会実装に向けた取り組みを行ってまいりたいと考えております。今後とも皆様のご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
所長・教授立矢 宏
ABOUT US
未来の
高度モビリティを
探求する
私たちは、市街地を含むいわゆるDoor-to-doorの自動車の自動運転の実現を目指し、自動運転に必要となる地図の生成・維持管理といった基盤的研究から、自動運転のコア技術である認知・判断・操作に関する研究、大規模集積回路(VLSI)を用いた高速演算に関する研究、さらには湿潤路、雪路などの滑りやすい路面でも車を安全に制御するための研究に至るまで、自律型の自動運転に必要な技術をアカデミックな立場から網羅的な研究を進めてきました。
自動運転を可能とする運転知能を開発するためには通常のドライバが行う認知・判断・操作といった一連の運転行動を車載センサ・コンピュータ等によって代替させる必要があります。またより自然な自動運転の実現には高精度な地図も必要となります。このため、高度な認知・判断機能を実現する人工知能(AI)技術や、センシング誤差を考慮しロバストに状況を解析可能な確率的ロボティックスといった分野の技術を基礎とし、多数のセンサ情報を融合し複雑な走行環境をロバストに認知・判断して市街地を走行する技術や、高精度地図を自動的に生成する技術などといった研究を1998年ごろから実施してきました。また高度な画像処理を高速に行うVLSI(大規模集積回路)のアルゴリズム等の研究についても研究を進めてきました。
さらには、車の挙動が不安定となる滑りやすい路面でも安定した自動運転を実現するためには、路面の滑りやすさを検知して車の制御を適切に行えるようにする技術が必要となります。そこで、車と路面との唯一の接点であるタイヤに注目し、タイヤのサイドウォールや、ホイールの情報から、路面の摩擦係数を測定するシステムについても研究を進めてきました。実際に、市販のタイヤを用いて実車走行時に路面摩擦係数の測定を可能としており、世界的にも希な成果を挙げています。この技術は、将来の自動運転技術への応用が期待されるのみならず、ABS、衝突被害軽減ブレーキなど、既存の先進運転支援システム(ADASの更なる発展にも寄与できるものと考えられます。
これらの研究成果のうち一部は、金沢大学が2015年初頭から進めている国内の大学で初となる市街地における公道走行実証実験にも生かされ、石川県や北海道、東京都など、過疎地から都心部、通常天候から悪天候に至るまで、幅広い交通環境における自動運転を実現してきました。そして、これらの取組は国内外の多数のメディアに取り上げられるとともに、多数の企業や大学との共同研究や国家プロジェクトなどを通して産学官で連携した活動をしています。私たち高度モビリティ研究所では、今後もこれらの取り組みを通して、日本の自動運転技術の研究開発に学術的な立場から貢献することを目指しています。
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